とある庭園
この場所は今は空き家になっている。というより30年以上も空き家だ。
手入れだけは毎年かかさずされている。
ふとしたことでこの家の持ち主の80歳を超えたおばあちゃんに出逢い去年この家を借りようと思っていた。
ほおっておくよりも人が住み手を入れた方が良いと説得して3カ月ばかりその方向で進んでいたけどおばあちゃんの最後の決断は「嫁に来たものだで自分で決められない」ということだった。
ご主人が亡くなりいったい幾月たったんだろう。
この庭も池のあった部分の泥を掘れば昔の姿が見えてくるだろうと楽しみにしていた。
古い門屋があって昭和の初期まで郵便局として使われていて奥の母屋は雀踊りがついている本棟づくりだった。
建具も木製建具のままで・・・
こんなに庭がありそして広縁がぐるっと廻っていた。トイレもくみ取りで焼き物の便器が座っていた。
明治時代ここに川の流れを引き込み鯉を飼っていたそうだ。
豊かな信州の庄家の屋敷だった。
建築でさえなかなか古い物は残っていかない時代に、まして庭園が残る数など本当に少ない物だそうだ。
この庭を創り過ごしていた思いが留まっている。
でもそれを理解し、復元し残していくことが出来ないことにもどかしさを感じたけど、人には相応なものがあり、自分達には今の小さい古屋が丁度良かったと満足している。