studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

私の勝手にお薦めルート

studio-aula2006-01-26

松本市の歴史的遺産はその殆どが廃仏毀釈あるいは明治の大火、戦後の再開発事業によって失われてしまい、同じ時代を共有し継続している場所が非常に少ない。
そこで残されているわずかなリソースを生かす為に、江戸から平成までのそれぞれの時代を意識しながら回遊していくルートを提案することにした。


1.松本城         江戸から明治までの大きな時代の流れで奔走された城
2.開智学校他       明治になり真っ先に飛びついた擬洋風建築の学校
3.旧司祭館        明治初期の時代の洋風建築
             この間の上土通りは大正ロマンの街といわれる。
4.縄手通り        対面販売の良さを味わえる場所。昭和のテキ屋風通り
5.中町通り〜日の出町   明治から昭和にかけてシルク産業の隆盛の後をひきずる街
6.あがたの森       大正〜昭和にかけての高等学校の歴史
7.湧水          シルク産業が栄えた背景にある湧水で憩いの時間を。
8.道祖神         江戸時代の庶民崇拝のなごりを体感できる。
9.七夕人形        江戸時代から残る素朴な人形にまつわる心温まる話。
10.まつもと・市民芸術館 
 最後を飾るこの場所は平成の新しさそのもの。文化の街と言われる松本。最新設備の整ったこの場所で松本から生まれる演劇を体感して欲しい。小劇場での芝居は常に観客と共にありその場所性が重要な意味を持つ。

 ここで体感する、できるものとは時代は常に移り変わるもので浸っていられるものではない。という感慨である。時代村のようにその時々の時代の良さを味わう場所は多く用意されているが、このルートのように時代が交錯し次から次へと移り変わるルートこそ日本文化の神髄である。

 私たちは常に新しいものを見て生きてきた。
 その時代に翻弄されてきた結果がここにある。
 そしてこれからは、それだけでは満足できない時代に突入していくのだ。この街のこのルートからそれを学び取って欲しい。残したいものは常にほんの僅かだけ街の片隅に忘れ去られているものだ。
 
 このルートを「時を刻む街・松本」と名付けたい。