studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

森林について考えてみる。

studio-aula2005-10-03

 我が国には自然林とは異なる森林形態として、主として針葉樹からなる人工林が広い面積に存在する。国土の3分の2が森林に覆われている中で45%近くが人工林であることは
、世界的に見ても希であり、環境の保全計画にあたっても無視出来るものではない。1960年代に全国的に行われた大面積皆伐、針葉樹一斉造林による広葉樹林の消滅とそれに伴う多くの生態系の喪失もあった。これらの森林の多くは、近い将来収穫期に入ることも併せて、重要である。大面積木の同齢針葉樹の林は生態系の観点から見たとき、問題は多い。
しかし、現状では、林業という一次産業の中でこれらを充分に保育し、海外の森林を破壊せずに、国内での材が可能になるような保全計画が必要である。
林野庁木材需要表による平成11年の日本の用材需要量(丸太換算)は、9.599立方mで用途別に見ると製材用は3.958万立方m、合板用に1.312万立方m、パルプ、チップ用で4.135万立方mだった。
供給量で見るとこのうち国産材は対前年比3.1%減の1.876万立方m輸入材は8.7%増の7.905万立方mとなる。このため、木材供給量が全体として増加した中で木材自給率は前年に比べ1.8%低下し19.2%となり2年ぶりに20%の大台を割り込んだ。
又、平成10年度林業白書の資料の中でこれを輸入地域別で見ると、米材が最も多くついで南洋材、北洋材、ニュージーランド材と続いている。
 北米で行われている汚い木材の利権争いについて以前本で読んだ事があるが、その時ははるか遠い場所での話だと思っていて何の罪悪感すらなかった。しかし、実際建築現場で使用される梁や桁などの大きな材はほとんどが米松だという事実を考えるとき、それは日本市場の招いた問題であることを自覚しなければならないと思った。
 私の住んでいる長野県では、昔から梁に使われているのは長野の北の地域では杉も見られるが主として赤松を主とした松だ。柱も檜を使う地域もあるが松が多く、最近になって
安価になったため国産の杉を使うことも多くなった。一頃、10数年前は集成材でないと強度がとれないと言って米栂の集成材が主流だったが今となっては栂が市場からほとんど無くなってしまい、入れ替わりに細い檜の柱がブームになった。
 しかし、今地域の山で問題になっているのが戦後植林された大量のから唐松である。唐松はねじれも多く強度的にも問題があるため非常に使いにくい材料だ。板目も個性が強くて使う場所も限られてしまう。このミスマッチをどうにかしようと林業試験場では唐松ビームなる梁材を開発したが需要がない。しかし山から伐採しなければ、植林も保全も出来ないことから大きな課題になっている。
 専門家の見解によると針葉樹林を生態学的視点のみからの解釈に基づいて、かつての植生に戻そうとする計画は、対象地によっては作成するべきでない。これらの造林地を皆伐して、いきなり広葉樹林に戻そうとすることは、かつての大面積皆伐と同様の影響を環境に与えることになる。強度の間伐を行いながら、広葉樹の侵入を容認し、徐々に密度を下げながら、本来の環境に戻していくような手法を計画する必要がある。
木材の需要だけで森林の保全を考えることは無理があることだが、元来森林は人間の生活と深く結びついてきた。人の手の届く範囲で森林を活用しそれが森林を保全する形にも繋がっていてバランスが取られていた時代が長く続いた。急には無理にしても、これからの時代、ペレットなどのエネルギーが期待されていることも希望の一つだと私は考える。