studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

白井晟一 750冊 限定本


1974年12月に中央公論社から出版された作品集です。残っている作品を勉強してから訪れるために購入しました。
白井晟一の作品と同じ様に紙の質から練りこまれ写真が一枚一枚貼り付けてある、カバー、表紙、見返し、扉、外箱までが一つの作品とも言える素晴らしい本で、内側の文体も全ては哲学で文字も極めて美しく配列されている。

最後の断筆には2千字ほどの短い文章が5種類ありどれも彼の創造への思考の根本が書かれています。
その中のひとつ「豆腐」豆腐はそれ自体が美でもなく感動を呼ぶ形態でもないがその普遍性は要の美と解釈しています。それは小さな頃から変わらない味や食感もそうですが家の中で母が調理するその形や音はずっと変わらず正に要の真髄であるというのですが、そこにはデザインされた物に対しての嘆きが感じられます。

目先のことに捉われると建築や文化は流行のものと化し特に住宅はひとつの巨大産業の現在全てはマスコミニュケーションに振り回されてしまいます。しかし本質にある人間の生活や根底にあるものは縄文時代と変わらないとさえ書かれ今の現状を考えさせられます。
やはり結局は作られたものは直ぐに飽きられるもの。慌てず、騒がず、捉われずに本質と向き合って地に足がついた仕事をして行きたいものです。


こうした本は一時的には私の手元にありますがやはり社会的な財産です。譲ってくださった方も他の人に大切に見て欲しいと考えていたようです。