studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

マイアーキテクト

studio-aula2006-11-22

劇場公開で話題になっていた「マイアーキテクト」を劇場で見たいとずっと思っていたがチャンスが無くDVDを東京でようやく購入した。

これは建築家ルイス・カーンの息子による父親さがしの旅のドキュメンタリー作品である。
金持ちの国に媚びることもなく、バングラディシュなど貧しい国の為に自費を捻出しながら偉大な建築を創造したカーンの足跡と人柄が良くわかる美しい映像だった。



この中に登場する彼の言葉から


「かつて在ったものは常に在ったものである
今あるものも常にあったものであり
いつかあるであろうものも常に在ったものである
ビギニングズとはこのことだ」

土地の記憶・建物の記憶とは建築家が常に向き合う問題なのだけれど、インドに旅をした時に無邪気な少年のように自由になれた彼が言い出しそうな言葉である。
私にはこの言葉が輪廻転生を言っているようにも聞こえた。

それにそこにかつて存在したものが例え存在しなくなったとしても、何時の時代になっても常にあったものなのだ。
消えていくことに対しあまりに悲観したり、成就しなかった計画に悔やんだりすることも多いけどそこを超えて存在するものもまたあることを彼は知っていたしそれを言葉にして伝えてくれたこともまた彼の偉大さなのだ。

彼の作品は完成したものはわずかだけれど、彼の追い求めたその普遍性や神秘性は建築家ならば誰もがあこがれる到達点だと思う。

独自の形を追求すること、それから万人やどこの土地をも愛することで人を包み込みながら許容する建築はうまれる。それはまるで教会やドーモのように。