studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

金沢21世紀美術館 1

studio-aula2005-09-15

 金沢21世紀美術館,設計者の妹島和世西沢立衛SANAAは、今や日本を代表する建築家である。
※彼らの建築は一見シンプルな外観に複雑な内容をかかえこんでいる。それは、複雑な構造や背後の理論によるというよりは不可解な要素から生じる複雑さである。
3次元的な建築ではなく、もう一次元踏み入れなければ理解することは出来ないようだ。では1次元とは何か。3次元の空間に対して、時間という1次元を加えて4次元とする考えは通念ではあるが、4次元とはいろいろな比喩で使われる領域でもある。※

私がこの建物を初めて眺めた時、従来の美術館の概念を一蹴させられた。それはこれま
では安藤忠雄谷口吉生といった建築家が美術館のありかたを建築の用語を持って完結していたからだ。
この建物には有料ゾーンと無料ゾーンがありそれが少し曖昧な形で分割されている。入り口は4箇所に分かれていてどこがメインエントランスなのかもわからない。市役所に面した西口、商店街に開いている北口、この方向には兼六園が位置している。本田通り口の東口、そして夜の飲食街として栄えている柿木畠南口である。
一応東口にはロッカーとチケット売り場が設置されているからメインの入り口なのだが4箇所どこをみても天井は低く幅2メートルほどの狭い通路で構成されている。
私が入ったのがそれとは反対側の市役所口からでチケットセンターにたどり着くまでにも様々な空間体験ができた。市民ギャラリーの前庭にはパトリックプランの緑の橋が、それから天井にはジェームスタレルのブループラネットスカイなどによって様々に空間のなかで表現がなされていた。
SANAAの手法は従来の建築言語に固執せず出来事や行為と言った時間的要素をもう一つの次元として空間に組み込んでいる。グラフィックやボリュームといった様々要素を繰り返しスタディし、常それを模型上で確認し次々と様々なケースを繰り返す。
金沢21世紀美術館の場合も100以上の円盤状のスタディ模型を並べスタッフなどの細かい要望を取り入れる一方で造形的なコンセプトとしての貫通する複数の廊下と外観の彫刻的なフォルムに関しては妥協しなかった。
この内部空間の通路には様々な人だかりがあった。それは展示を楽しむためだけに限らず、何かを考える人、待つ人、語る人、まるで美術館の室内の中に街のなかの通りが出現したかのようだった。
  この建物に入っていくとだいたいの人はとまどいを感じるだろう、しかし、それは方
向性を失った現代の建築への答えになるのではないだろうか?空間を体験しながらそれぞれがさまざまに理解を深めていくそんなあり方が新しい形なのかもしれない。金沢は土着の人が多い土地だと思う。会話の中でもしばしば加賀百万石の誇りをお年寄りには感じられた。古風な考えの中でも空間体験というのは様々な受けとめ方がされていくのがおもしろい。


金沢は古い物と新しい物が調和されている街だった。
その中に美大も工業大学もある。
駅の側にはニューヨークのParsonsという美術大学との提携校があって2年くらいの契約で日本にやってきた海外の現役のデザイナーからプロダクト、テキスタイル、建築などのデザインを生の英語だけで学ぶことができる。

ここで2年デザイン基礎と英会話を学びながら過ごし半分以上の学生はニューヨークにそれから2割ほどがヨーロッパへと進学していった。
ベースにさまざまな芸術への親しみがあるから金沢に出来たこの美術館も市民に受け入れられているんだろうけどモダンな絵画みたいな建物。
またいつか暮らしてみたい街。金沢。
冬の雷にはびっくりしちゃったんだけどね。