studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

フーテンのトラ家を買う。

私の父は寅さんのようだった。
私が幼少の頃は母とのけんかが原因で東京に家出していたらしく時々帰宅したことを亡くなる寸前に母に聞き、自分の小さな頃の記憶「時々突然やってきてべたべたして何処かにいく」何かが脳裏に蘇った。
そんな父も50歳になる前に家を建てた。私が嫁に行くときはこれで恥ずかしくないだろうと呑気に言っていたけれど50歳の借金が私を憂鬱にさせたものだ。
結婚どころか一生自分が父母の面倒をみる覚悟がこの時に芽生えた。

しかし父は私の心配をよそに一生懸命に働き13年で借金を完済してしまった。

私も父の血を受け継いで30代はふーてんよろしく引越しは15回を超えた。まるで宿かりな生活をしながら場所を楽しんだ。それから「このままでは何も残らない」と誰かに言われふと気が付いた。

広丘に事務所を建ててから時々商店街を歩く。時代の重なりのない表面だけ綺麗な商店街は機能も失せる寸前ではあるがこの場所は自分の町だから愛着もわく。
この場所で時を重ね、人との出逢いを重ね、刻んだものは自分の財産になる。薄っぺらい建物が続く場所であったとしても地に足をつけ歩いていけばそこは様々な自分の歴史が重層する場所となるはずだ。
ふーてんのトラ家を買う。帰る場所があることは人間の幸せだ。そんな父だったけど私の母はEPSONなどで強く働き続け、ものすごく情があつい人・・だから尊敬している。