studio-aulaの日記

長野県松本市、塩尻市、安曇野市などで活動する一級建築士事務所です。

鹿苑寺(金閣寺)について

 鹿苑寺金閣寺)の北西には山が迫っている。朝、大学に行く時、金閣寺を左手にすると正面に大文字焼き焼成後を浮かび上がらせた山の姿を目にする。そして更に北には標高600メートルほどの衣笠山が構えている。
 塀に囲まれ、木々が高く茂り一見閉ざされその庭園の周りには観光客相手の飲食店や民家が混在している。いつもそこを通りながらその中にある金色で高貴な建物を想像し頭に巡らせていた。そしてそれほどのきらめくモノが本当にこの場所に存在するのが不思議な気持ちさえしていた。
 この日も大通りから砂利道に入るまでその気持ちは変わらなかった。かつて中学校の修学旅行で訪れたときには大きな観光バスでやってきて「早くしてください」とせかされながら目にした建物のきらびやかさだけを覚えていた。またこの日は土曜日に重なり修学旅行生や一般の人々が多く、立ち止まる場所を選ぶのさえ少し苦労した。それから人の少ない場所でスケッチをしながらその数十分の間に様々なガイドさんが様々な団体を案内していく姿を眺めているとその説明の話をまるで覚えていないのも無理もない事のように感じた。
 
 そんな雑踏の中をゆっくり、入り口から進んでいき、その通路を直角に折れるとこれから現れる金閣への期待が徐々に高まってくるのを感じた。格式はあるが平凡な筑地塀に囲まれた静かな道だった。しかし歩みを進め再び左手に曲がった瞬間、鏡湖池を前景に印象的な(浄土的な感覚がした)建築物の姿が現れた。丁度、時間も4時頃で日も傾きかけている為、照らしだされた金閣は正に黄金の輝きを放っていた。潔いほど鮮やかである。鏡湖池には黄金の金閣が浮かび上がっている。そして金閣寺自身も後ろの山の緑の色の深さに金色がもっとも浮かび上がっていた。存在する色は池の緑それから背景の緑。庭は意図的に出来るだけ静かな素材感と造形で周辺を象っている。
 しばらく修学旅行生の団体の中に紛れ込んでいるのも気がつかないほど唖然としていた。それと対比するようにあまりにも目の前にある風景が研ぎ澄まされていてその間合いが不思議だった。